昨年(令和5年)の話なのですが、当社のクライアントが単独で管理運営する施設に大手企業の担当者が来館し、「令和5年度の公募では、当社とコンソーシアム(JV)で共同申請してほしい」とのオファーがありました。そして、5月の連休明けに当社のクライアントが電子メールでお断りすると「では当社が単独で応募する。事業計画書の情報公開請求も行わせてもらう。」との返信があったのことでした。
私は、情報公開の件で、ひとつアドバイスしました。この施設がある自治体の情報公開条例では、目的として「公正で民主的な市政の推進」、請求者の義務として「情報公開により得た情報を適正に使用し、第三者の権利を侵害しない」というような趣旨の条文が定められてます。(多くの自治体の情報公開条例にもほぼ同じ条文があります)
要するに、情報公開制度の根幹は、あくまで「適正な行政の推進」という公益であり、私的な利益の保障ではありませんので、指定管理の応募のために(=私的な利益)情報公開請求を行うことは、制度の趣旨に反します。
私のアドバイスは、この大手企業の情報公開が「私的な利益」を目的としていることを市の担当課に伝えることでした。(なお、大手企業から受けたメールを市に転送することは法的リスクがあります。メールがある場合は、コピーを見せるだけにした方がよいと思います。)、
結局、大手企業の情報公開は、一度は非公開となりました。「一度は」と記載したのは、その後、別の個人名義(多分この大手企業の社員)から同様の情報公開請求があり、この方が「請求の趣旨は私的利益でない」ことを主張し、部分公開となったからです。(非公開となったにも関わらず、要因を精査して、請求し直した大手企業の対応力はさすがです。)
ただ、部分公開されたとは言え、公開時期を50日以上延期できたことは、それなりに意味があったのではないかと思います。(当社のクライアントが無事、指定管理者に選定されました)
みなさんも、指定管理者の事業計画書を情報公開請求することがあるかもしれませんが、自治体から趣旨を尋ねられたら「行政研究」または「行政のチェック」と回答するべきです。仮に、本音が「指定管理に応募する際の参考にしたい」ということであったとしても、この大手企業のように意思表示さえしなければ、自治体が本音を立証することは不可能で、通常のルールに従って対応せざるを得ないからです。(2024.5.1)