このコーナーでは、全国の指定管理施設の先進事例や管理運営のヒントとなる事項を随時ご紹介します。皆さんの施設の管理運営の参考にしていただければ幸いです。
【このコーナーの内容】
・先進事例
・ユニバーサル駅伝
・企業とタイアップしたイベント
・コスト削減の流れを変えた事故
・他山の石
・簡単でない安全確保
・厳しい判決
・利用者の安全確保と快適な施設利用の両立
・施設のファンを増やす
・厚生労働省による全面禁煙の通知
・テニスコートの利用促進策
・潜在ニーズを探る
・ウィンドウズ7
・連休の分散化
・若手職員の育成・定着
・ある財団の経営戦略(その1) ・ある財団の経営戦略(その2)
・研究者の公演活動の義務化
・努力を伝える努力
・なぜ公益財団法人(社団法人)を選択する?
・大規模災害発生時の被災者受け入れの想定
・東日本大震災関連の判決
・安全水準を高めるボランティア ・指定管理者同士の連携
・大規模スポーツ大会に関連した事業の実施要請
・「with コロナ」でのイベント等の準備
・応募がない施設の再公募
仕事柄、多くの指定管理者の先進事例を目にするので、少しくらいのことでは驚かなくなっているのですが、埼玉県所沢市の図書館が近隣コンビニで本の貸出や返却を可能にしたのには久しぶりに驚かされました。
図書館利用者は1回に2〜3冊くらいは本を借ります。したがって、例えば、土曜日に5人が本を借りに来て、5人が本を返しにくるだけで20冊程度の本がコンビニに滞留する可能性があります。スペースが少ない店舗で、本のようなかさばる物を一時保管することをコンビニがよく了解したなと思いますし、逆に言うと、コンビニの了解をとるために、図書館側が本の回収を人員をかけてこまめに行うことを約束しているはずです。ほかにも、貸出に当たっては、貸出カード預かりや本人確認などコンビニ側の多くの負担があり、コンビニを説得するのに相当な苦労があったと思います。
コンビニは24時間365日利用可能なので、協力が得られると非常に大きな力になります。みなさんも、コンビニとの連携はぜひ考えてみてください。
なお、参考までに21年度に報道された先進事例の中で、私が工夫していると感じ、かつ、次回公募時に大きなポイントにつながると思うアイディアを5つ挙げておきます。
室蘭市総合福祉センター(北海道) | 高齢者の口腔ケア |
県民の森(岩手県) | 夏休み自由研究サポートダイヤルの設置 |
伏見港公園(京都府) | 病院と連携した健康サポート事業 |
浜松城(静岡県) | 天守閣からの花火見物 |
栗林公園(香川県) | 8カ国言語による音声案内システムの導入 |
今年も東京マラソンが盛大に開催されましたが、最近、東京(皇居)で駅伝がブームになっています。なかでも、某NPO法人が開催する「ユニバーサル駅伝」が多くの人々の共感を呼んでいるようです。
ユニバーサル駅伝とは、小学生、視覚障害者、車いす使用者、高齢者、フリー(資格制限なし)の5人がたすきをつなぐ駅伝です。たまたま、一度見かけたのですが、通常の駅伝よりも順位の変動が大きく、スリリングで、選手も応援も想像よりはるかに盛り上がっていました。
まだまだ東京以外ではなじみのない駅伝だと思いますが、スポーツ施設や公園を管理運営しているみなさんは、自治体職員や指定管理審査員の評価を高めるという観点から、実施や次期公募での提案を真剣に検討する価値があるイベントです。
みなさんの周りで考えてみてください。野球やサッカーの同一チーム内に小学生と大人の選手がいることは少ないと思います。ましてや視覚障害者や車いす使用者が健常者のチームに参加していることなどほとんどないでしょう。スポーツは、属性がよく似た者同士が仲間になりやすい、言い換えると、世代間交流や障害者・外国人との交流が行われにくいという特性があります。
この状況は、ただ単に施設を管理しているだけでは、何ら変わりません。公の施設の管理運営者として、ユニバーサル駅伝のようなあらゆる層の住民がいっしょに参加し、交流を深められるイベントを企画・提案するノウハウがあることを示すことが間違いなく大きなポイントにつながります。
なお、ユニバーサル駅伝を企画する場合は、当然のことですが、コースの安全性、つまり段差解消や穴ぼこ修理が必要です。これらが予算的に難しい場合は、このような趣旨の別のイベント検討してください。
少し前ですが、某カップラーメンの会社が発売38周年を記念して、東京都の渋谷でカップラーメン3万個を無料配布したとの記事が新聞に載っていました(2009年9月19日付け)。
38周年とはいかにも中途半端な年数ですが、逆に言うと38周年で3万個も無料配布するのですから、40週年となる2011年9月18日には、相当大がかりな予算を組んだイベントを企画していることが容易に想像できます。ということは、うまく交渉(提案)すれば、みなさんの施設のイベントにも協力してもらえる可能性が十分にあるということです。
民間企業にとっては、例えば、自社製品の無料配布のようなイベントでも、公の施設で開催できることは、単なる宣伝だけにとどまらず、社会貢献という意味がプラスされるので、大きなメリットがあります。みなさんの施設にとっても無料(企業負担)でイベントが開催され、利用促進につながるのですから、とてもよい話です。
実は、このような情報は案外たくさんあります。例えば、地元の銀行や地元大手企業の多くは「創立○○記念行事」を5年ごとまたは10年ごとに行っており、極端に言えば、毎年どこかの地元企業が創立○○周年記念行事を行っていると考えても決して大げさではありません。このような情報を的確に見つけ、うまく交渉(提案)し、施設運営に生かしていくのも指定管理者としての大切なノウハウのひとつだと思います。
なお、公の施設、特に公園での企業イベントの開催は、自治体によっては、厳しい制限があります。特に、初めて企画する場合は、実施する前に自治体と必ず協議してください。
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平成18年7月に小学生がプール給水口に吸い込まれて死亡した埼玉県ふじみ野市の事故はみなさんも記憶があると思います。あの事故以来、指定管理者選定の流れは明らかに変わりました。この事故により、当時のふじみ野市の担当課長と担当係長は刑事責任を追及され、有罪(実刑)判決を受けて職を失いました。
もちろん、担当課長、担当係長にも責任があるでしょう。ただ、私が同じ立場だったら、あの事故が防げたかというと、正直言って全く自信がありません。あの事故を防ぐためには、モニタリング時にプールの中に入って給水口をチェックしなければなりませんが、おそらく水着を持参し、プールの中に入ってモニタリングしている自治体の担当者はいないと思います。率直に言うと、自治体職員がいちいち当該施設のすべての安全チェックを行うことは不可能で、結局のところ、信頼に足りる事業者を指定管理者に選定するしかないということになります。
自治体担当者は自らのクビがかかっているのですから、「安全・安心に不安がある事業者は選定したくない。」という機運が急速に高まりました。その結果、指定管理料の提案額が高いにもかかわらず、指定管理者に選定される例は、(判決が確定した)20年度以降、特に、小さな子どもが利用する施設を中心にかなり増えています。
これは、現在の指定管理者にとっては悪い話ではありません。つまり、「安全・安心の確保」に常に最優先で取り組んでいることをアピールできれば、それが大きな実績となって評価され、参入側より有利な立場になれるのです。みなさんも、「安全・安心の確保」には最大限の努力を払っているでしょうが、その努力を自治体担当者に伝えることも併せて考えてみてください。
例えば、「安全・安心確保委員会」のような会議を設置し、開催結果を(文書にまとめて)自主的に自治体担当者に報告するとか、職員が一斉に施設・設備の安全点検を行うので自治体担当者に立ち会いを要請するとか(自治体担当者が来なくてもかまいません。立ち合いを要請して、常に努力していることをアピールすることが大切です。)を行うと自治体担当者にみなさんの取り組みをアピールすることができ、次回公募対策にもつながります。
先日、指定管理施設ではありませんが、京都市内のマンションのエレベーターでの人身事故が報道されていました。みなさんの施設にはエレベーターはありませんか。ある場合は緊急点検を実施しましたか。
エレベーターに限らず、自動ドア、エスカレータ、ブランコ・滑り台等の遊具など、施設や設備・備品使用中の事故が報道されることがありますが、このような時は、みなさんが管理している施設や使用している設備・備品に同様なものがあるがどうかをチェックし、あった場合は、必ず緊急点検を行なってください。
指定管理者とって「安全・安心の確保」が最重要事項であることはみなさんよくご存知だと思います。しかしながら、「安全・安心の確保」は決して簡単なことではありません。みなさんと同様、大部分の施設は事故を未然に防止するために、日常点検や保守点検、定期巡回などに努めています。事故はそれでも思わぬ形で発生しているのです。事故を未然に防止することはとても難しいということを十分に理解し、他の施設で発生した事故を「他山の石」として、緊急点検や同様の事故防止のための方策の検討などを行うことが大切だと思います。
なお、施設での事故が報道された場合は、みなさんが管理運営する同種の施設(設備・備品等)の緊急点検を遅くとも翌日には実施し、結果(不具合がある場合は対応策)を自治体担当者に報告してください。
「翌日まで」に実施することがポイントで、専門業者に依頼して本格的に実施するよりも、職員の目視等でかまわないので迅速に対応することのほうが大切です。このような報告を迅速に行うことが自治体の信頼につながり、次回の指定管理者公募にも必ずプラスになります。
以前、福岡県にあるビジネスホテルチェーン内のコインランドリー洗濯機を利用したときの経験です。洗濯物を取り出した後、取り忘れがないかと洗濯機内を確認していると、開けていた洗濯機のフタがいきなり下がってきて、頬を切ってしまいました。幸いにも少し出血しただけですんだのですが、もし、目に当たっていたらと考えると、今でもぞっとします。隣の洗濯機はフタの稼働が重くて簡単には落ちてこないようになっているのですが、私が使用していた方は、ねじがゆるんでいるのか、フタが簡単に落ちてしまうようになっていました。
みなさん十分に理解されていると思いますが、「安全・安心の確保」というのは、決して簡単にできることではありません。今回のホテルも安全には気をつけていたのでしょうが、洗濯機のフタまでは点検ができていなかったようです。
人間の予測には限界があり、どんなに細心の注意を払っても、見落としている点が必ずあります。自分が経験した危険な経験や報道される他の施設の事故は、自らの施設に当てはめて考え、日々の点検箇所や点検内容の再チェックを職員全員で行うという仕組みを作ることが大切です。このような努力はやがてみなさんしか持ち得ないノウハウとなり、次回公募の大きな武器になるでしょう。
なお、洗濯機がある施設はあまりないでしょうが、コインロッカーがある施設は結構あると思います。コインロッカーのドアも案外、指つめなどの事故が発生しています。コインロッカーも必ず点検を行うようにしてください。
昨年(2009年)、公園から自転車で飛び出した小学2年生が自動車にはねられたのは、安全対策に不備があったことが原因として、公園管理者である美和町(愛知県)に対し、約5,600万円の支払いを命じる判決が言い渡されました。
判決によると、公園の管理状況について、
■3〜5メートルの樹木が道路沿いにほぼ隙間なく茂っており、見通しが悪い。
■飛び出しを防ぐ措置がとられていない。
と指摘し、管理者である美和町の責任を認定しました。(ドライバーの責任及び児童の不注意も併せて認めています。)
みなさんがどう考えますか。率直に言って、管理者に厳しい判決だと思います。一般に、管理人が常駐している施設については、利用者の安全について、注意義務を負っていますから、今回のような事故が発生すれば、管理者に一定の責任が及ぶことはありうるでしょう。
けれども、今回の公園のような、管理人が常駐しないことを前提に運営されている施設は、判決の「飛び出しを防ぐ措置が取られていない」という指摘、つまり、子どもの飛び出しを防止する措置まで管理者が責任を負わなければならないというのは酷だと個人的には思います。
しかしながら、、このような判決が出た以上、たとえ控訴審で争われているとしても、公園を管理している指定管理者のみなさんは、これを無視することはできず、何らかの対策をとらざるを得ません。一般的には、
■公園入口道路に沿った部分の樹木を一部伐採し、見通しを良くする。
■ 公園入口部分にカーブミラーを設置してもらうよう道路管理者に要請する。
■道路沿いに子どもの飛び出し注意を喚起する看板を設置する。
■公園入口から出る場合は左右をよく確認しましょうという趣旨の看板を設置する。
などが考えられるでしょう。
意書きがあっても柵があっても飛び出していく子どもはいますので、これらの対策で事故の可能性をゼロにすることはできませんが、今後、万一、同様の事故が発生した場合に、何にも対策をしていなければ、民事責任はもとより、場合によっては刑事責任までも負わされかねません。他の施設で発生した事故に迅速かつ敏感に対応することが、指定管理者としても責務であると同時に、自らを守ることにもつながるのだと思います。
「安全・安心の確保」の重要性を強調する記事が続きました。ただ、「安全・安心」が最優先されることは当然ですが、「安全・安心」であればよいのかというとそれだけではありません。
以前、横浜市のあるホールで某アイドルのコンサート開催中に3階最前列の観客が2階に転落するという事故がありました。一般にポップスやロックコンサートでは観客がスタンディング状態になっています。2階や3階部分の観客が興奮してスタンディング状態でオーバーに飛んだり跳ねたりすると、転落してしまうリスクが発生するのです。
これについて、ある指定管理者向けのサイトで次のような記述がありました。事業計画書作成のポイントとして「当社では、来場者の安全確保のために公演中2階席及び3階席の最前列はスタンディング禁止とします。このことを公演開催前に利用者に徹底し、公演当日には、来場者向けの表示・アナウンス、監視員の配置などを義務付けます。」というように記載することを勧めているようです。
趣旨は理解できないわけではないのですが、私の考えは違います。コンサートでスタンディング状態になる時間帯は一番盛り上がっている状態です。そもそもこのような状態のときに、たまたま2階、3階の最前列の席のチケットを入手した利用者だけを一律にスタンディング禁止にすることは利用者の心情を全く無視したやり方です。他の方法で安全確保ができないかどうかを検討して、どうしても無理だという場合に断腸の思いで実施する対策で、積極的に実施する安全対策でないように思います。
現に、2階、3階の最前列でスタンディングしても安全に利用できる施設はたくさんあります。これらの施設のハード的対策やソフト的対策を十分に研究して、これらを取り入れられないかどうかをまず検討すべきでしょう。
また、最近は、オールスタンディング状態になった時に舞台が全く見えなくなる小さな子どもに配慮して、2階、3階の最前列をスタンディングができない「親子席」や「子ども席」にするよう主催者に指導している施設もあるようです。はじめからスタンディングできない席として販売すれば、スタンディングを希望しない利用者しか買わないので、利用者の満足度が下がることがないとの発想で、これも問答無用のスタンディング禁止よりはずっと利用者の理解が得られる安全対策でしょう。(もちろん、監視員は必要です。)
一律の禁止行為はわかりやすくよい面があることは事実ですが、リスクも発生します。東京のある施設の3階最前列はスタンディング禁止ですが、コンサートが盛り上がるとほとんどの観客が立っており、監視員が注意しても座りません。このような状況で万一、転落事故が発生すれば、事業計画書にスタンディングを禁止すると記載した指定管理者も当然管理運営責任を問われることになります。
最近は指定管理者の審査委員会に利用者代表が加わることが多くなりました。利用者代表に高い評価をもらうためにも、みんなが楽しく利用できる管理運営を提案する必要があります。安全・安心の確保はもちろん最優先ですが、利用者を無視した安全対策は少なくとも利用者代表からは高い評価を得らません。あくまで、利用者の立場に立って、利用者の安全確保と快適な施設利用を最大限両立させることを追求するという姿勢が指定管理者に求められていると私は思います。
同世代の友人からいつもばかにされるのですが、昔からSPEEDの曲が好きで、昨年、再結成後初のコンサートに行きました。 ちなみに、SPEEDについて少しだけ説明すると、女性4人組のアーティストで、96年にデビューしましたが、4年あまりで解散し、2008年になって再結成されたグループです。
久しぶりに行ったコンサートで、一番驚いたのは、来場者のほとんど(80%くらい)が若い女性だということです。また、かつては、島袋寛子さんに対する声援が一番大きかったのですが、今回のコンサートでは、シングルマザーとなり、聴覚障害の子どもを育てている今井絵里子さんに対する声援が一番大きくなっていました。
たまたま、私の隣に座っていた女性も今井絵里子さんに大きな声援を送っていました。彼女によると、子育てと仕事をシングルマザーでありながら両立している今井絵里子さんの人生そのものに感銘を受け、SPEEDのコンサートにはじめて来たとのことです。
つまり、がんばっている今井絵里子さんに元気をもらうためにコンサートに来ているわけで、曲を聴くためにコンサートに行く私には全く理解できないことなのですが、会場を見ていると、そんな人も(特に若い女性に)間違いなくたくさんいるということを感じさせられました。
これは、施設の管理運営にも応用できるかもしれません。例えば、下記のような、表示を行うのはどうでしょうか。仕事にも子育てにも頑張っている女性はとても輝いて見えます。そういう女性が働いていることをPRすることが共感を呼び、施設のファンを増やすような気がします。
【施設内(例えばトイレ)での掲示】
私は、○○です。●歳と●歳の2児の母親です。 |
ちなみに、SPEED同様、女性4人組のアーティストで、メンバーのうち1人が母親となったMAXも最近活動を再開したのですが、コンサートチケットは即日完売だったそうです。
ほかにも、安室奈美恵さん、広末涼子さん、益若つばささんなど子育てしながら第一線で活躍する女性が以前よりも明らかに増えています。「美人よりも公私に渡って輝いている女性」という時代が到来しているような気がしています。
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厚生労働省が飲食店や遊技場なども含め、不特定多数の多くの人々が利用する場所を全面禁煙にするよう求める通知を都道府県に出しました。通知は努力義務にすぎませんが、民間施設にも全面禁煙を求める以上、公の施設は全面禁煙するのが当たり前というムードがあります。
減少傾向にあるとはいえ、まだまだ喫煙者も多く、問答無用の全面禁煙には多くの利用者の反発が避けられない一方で、受動喫煙防止に対する意識も高まっており、このような通知が出されているのにもかかわらず、何の措置もとらないのでは非喫煙者からの非難が避けられません。
指定管理者としては非常に厳しい立場に立たされるわけで、毎度のことですが、気軽に通知1枚出せばいいと考えている霞が関のやり方はどうかなと思います。(ちなみに中央省庁でも全面禁煙となっているのは厚生労働省と環境省だけです。)
これにどのように対応するかは、一義的には施設設置者である自治体の判断で、自治体が統一的な方針を出せば、みなさんはそれに従うしかありません。ただ、神奈川県のように全面禁煙を条例で定める自治体はまだまだ少数で、「施設の実態に応じて、今後、指定管理者と協議して定める」ということになる自治体も結構あるようです。
これは「指定管理者に判断を丸投げする」という役所用語で、「指定管理者が判断して責任も取れ。」ということです。迷惑な話ですが、今後、どのような対応を行うか、多くの指定管理者が判断を迫られることになるでしょう。ではどのようにすればよいのでしょうか。
対応は大きく分けて
■全面禁煙
■今まで以上に分煙を徹底する
■今までどおり
の3つに分かれます。
まず、全面禁煙ですが、これができればベストでしょう。ただ、喫煙者からクレームがあった場合に、全面禁煙の根拠が厚生労働省の紙切れ1枚では弱すぎます。「この通達は努力義務に過ぎない。」と主張されれば、クレームを抑えるのは難しいでしょう。最低限の話として、「多くの利用者が全面禁煙を望んでいる。」というデータを集めておくべきです。
具体的には、利用者アンケートで80%以上の利用者が全面禁煙を望んでいるというデータを持つべきで、慎重を期すならこれに加えて、利用者代表が参加する「意見交換会」などを開催し、この会議の意見を参考にしたとのアリバイをつくるべきです。
また、今までどおりという場合は、現在の分煙措置がきちんと機能していることを確認しないと、今度は非喫煙者からクレームを受けます。例えば、喫煙場所がすべての利用者が通過するエントランス付近に設けられているように、非喫煙者から見て分煙措置が不徹底という施設は結構あります。非喫煙者が受動喫煙のリスクなしに施設を利用できているかどうかをもう一度チェックしてください。
率直に言うと、私は、今まで以上に分煙を徹底するという措置が一番妥当なのではないかと思います。羽田空港にあるような喫煙ルームを設けることは、コストがかかりすぎると思いますが、喫煙場所に近づかなくても施設が利用できるよう、喫煙場所を見直すとともに、非喫煙者が誤って喫煙場所に行ったりしないよう表示をわかりやすくするという措置を講じることはできるのではないかと思います。
また、最近流行している「社会実験」をまねた手法も考えられます。例えば、午前中とか日曜日とか特定の時間帯(曜日)のみ全面禁煙にして利用者の反応を確認してみるのです。1年くらい実験して結論を出すということにすれば、結論を先延ばしできますし、利用者の反応を踏まえた対策も見えてくる可能性があります。
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ある公園(テニスコートが1面併設されている)の指定管理業務をお手伝いさせていただいた時のことです。その公園は、市内中心部からは非常に遠く、もともと平日の利用者が少なかったのですが、それに輪をかけて、平日の利用者数が前年より激減していました。事情をお伺いしたところ、平日の夕方に週2〜3回1人で練習に来ていた方が転勤したことが理由だとのことでした。
来ていた方は、平日の夕方にひとりでずっととサーブの練習をしていたようです。おそらく、週末はどこか別の市内中心部のテニスコートでゲームを楽しんでいたのでしょう。これは案外使えると思いました。
この公園のテニスコートは、利用料金は安い(1時間300円)のですが、市内中心部から遠いこと、ナイター設備がないこと、1面しかないことがネックになって利用者数が低迷しています。けれどもそれを逆手にとって、練習用のテニスコートとしての需要の掘り起こしを行うという方法があるのではないかと考えました。
このため、指定管理者の方と協議をし、サーブのボール受けるネットやレンタル用のボールを新たに用意してもらい、「練習用のテニスコートとしてご利用ください。」という趣旨のチラシを作ってPRしたところ、わずか3カ月で利用者が3倍になりました。
もともとの利用者数が少ないので、3倍でもそんなにすごい成果ということではないですが、それでも「テニスの練習をしたい。」という市民ニーズに応えることができ、公の施設としての役割は果たせたのではないかと思います。
考えてみると、テニスのサーブを練習する場所はあまりありません。市内中心部のテニスコートは利用料金も高いですし、何よりも、ひとりでテニスコートを利用していると、他の利用者から白い目で見られそうです。その点、料金も安く、人目も気にしなくていいこの公園のテニスコートを練習用のコートとして活用するというのはよいアイディアだったのかなと思います。
つい最近、ある旅行会社の支店長と話をする機会があったのですが、これだけ景気が低迷している中で、「もっと役立ちたい」、「もっと学びたい」というニーズを満たすツアーの人気は高まる一方だそうです。あまり、旅行に興味がない私でも、「○○島エコツアー」とか「○○大学短期留学ツアー」などは聞いたことがありますから、これは事実でしょうしし、また、決して旅行業界だけの傾向と考えるべきではないと思います。
みなさんの施設ではどうでしょうか。おそらく、なんらかの形で「社会に役立ちたい」というボランティアの活用には取り組まれているでしょうが、図書館や生涯学習施設はともかくとして、体育施設や公園で住民の「もっと学びたい」というニーズに応える管理運営ができている施設はそんなに多くないように思います。
少し趣旨は異なりますが、北陸のある体育館では、体育館使用の注意事項を直江兼続のイラストが、運動前の効果的な準備運動の方法を前田利家のイラストが説明していました(イラストの人物は定期的に変わるそうです。)。地元の子どもたちはこれを見ているうちに、歴史上の人物を覚えてしまうわけで、体育館でスポーツを堪能しながら、歴史も学んでいます。
この例は、対象が子どもたちですが、工夫すれば、大人の「学びたい」というニーズにも応えるよいアイディアも十分考えられるのではなでしょうか。多くの実績や経験豊富な経験を持つ方ほど「体育施設はスポーツが楽しむ場所」、「公園はゆとりやうるおいを利用者に提供する場所」いう固定観念にとらわれているような気がします。
施設運営から住民ニーズを読みとるだけではなく、世の中の大きな流れから、住民にどのような潜在ニーズがあるかを探ることも指定管理者の力量のひとつだと思います。
Windows7を購入しました。Vistaよりずっと快適に作動するのでとりあえず安心しました。
けれども、冷静に考えてみれば、世界でも有数の企業が、Vistaのような不評な商品を発売したことが本当に不思議でなりません。
あくまで私の想像ですが、Vistaの開発に当たっては、ヘビーユーザーのニーズが重視され、さまざまな機能充実が行われた一方で、複雑な機能は必要なく、インターネットが快適に利用できればよいという、ライトユーザーのニーズが軽視されたという面があったのではないかと思います。
利用者ニーズを把握した商品やサービスを提供することが、いかに難しいことかということをあらためて感じたWindows7の発売でした。
公の施設にも、ヘビーユーザーからライトユーザーまでさまざまな利用者ニーズがあります。一般に、現場に近い方は、ヘビーユーザーと話す機会が多く、ヘビーユーザーのニーズが利用者全体のニーズであるような錯覚を起こしがちです。けれども、Vistaのようなことにならないためにも、ヘビーユーザーもライトユーザーも、あるいは、利用したことがない方のニーズも十分把握した上で、これらニーズに応えていくという姿勢が大切なのだと思います。
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政府が、春と秋に5連休を創設したうえで、全国5つの地域別(「北海道・東北・北関東」、「南関東」、「中部・北陸・信越」、「近畿」、「中四国・九州」)に連休をずらして(しかも春と秋の2回ずつ)取得する「連休分散化案」をとりまとめました。実現は定かでありまでんが、報道によると、早ければ2012年に実現するそうです。
利用者がほぼ同一都道府県(市町村)に限られる施設は関係ありませんが、観光施設や大型コンベンション施設など、全国からの利用者が想定される指定管理者制度導入施設は大きな影響を受けます。
これまで、年1回のゴールデンウィークは、極端に言えば、そんなに努力しなくても、多くの利用者を確保できていたと思います。つまり、ゴールデンウィーク期間の広報や利用促進活動には力を入れなくても何とかなる状況でした。
ところが、もし、連休分散化が実現すれば、日本全国で見ると、春と秋で合計10回の大型連休が誕生します。日本全国から多くの方に施設を利用していただくチャンスが増える一方で、他地域の施設に利用者を奪われるリスクも増加してしまいます。つまり、指定管理者に広報や利用促進活動の一層の強化、特に全国展開が要求されることが容易に想像できます。
22年度に公募がある観光施設や大型コンベンション施設などに応募することを予定している企業・団体の方は、これまで以上に全国をターゲットにした広報・利用促進活動のアイディアを早い時期から検討しておくほうがよいでしょう。特に、5つの地域の境界となる埼玉県、静岡県、滋賀県、岐阜県、岡山県、徳島県などの施設は絶対に意識すべき事項だと思います
仕事で多くの財団の方からさまざまなご相談をいただきます。その中でも多いのが、「若い人材のモチベーションが上がらない」「若い人材が育たない」、「若い人材が定着しない」など若手職員に関する相談です。
話をお伺いすると、多くの場合、待遇面で問題があります。指定管理者制度は、公募するたびに、つまり、3年から5年ごとに管理運営コストを下げざるを得ないという現実があります。このため、若手職員の待遇改善を行う余裕がなく、「給料が上がらない」、「ずっと臨時職員のまま」などということが続く結果、職員のモチベーションが下がり、職場に希望が持てないために、いずれは辞めていくということが常態化している場合がほとんどです。
指定管理者制度の中で、この現実を変えることは容易ではありません。今後、自治体が指定管理料を上げてくれるなどということはまず考えられませんし、利用料金制であるとしても、職員の待遇を継続的に改善できるほど利用料金収入を大幅に増やし続けることは、現実的には難しいでしょう。
このような場合、私は、管理運営する施設を増やす、すなわち、新たな施設の指定管理者に応募することをアドバイスしています。管理運営する施設を増やすことができれば、現在、厳しい待遇で頑張っている若手職員を新たに管理する施設での重要ポストに配置することにより待遇を改善することができます。「今は厳しくてもいずれは改善する」という希望があれば、職員のモチベーションや定着率も大幅に改善することができるはずです。また、財団の経営から考えても、管理運営する施設が増えれば、規模拡大によるコスト削減が可能になるという大きなメリットがあります。
全国的に見ても、民間企業が管理運営する県や市の施設に他の自治体の財団がエントリーするという事例が結構出てきていますし、東北や九州のある県では、県の財団と市の財団が同じ施設にエントリーして競争するという事例まで発生しています。
もちろん、新たな施設の指定管理者に選定されることは簡単なことではありません。それだけに、もし、現在管理運営する施設をそのまま維持していくだけでは限界が見えているとすれば、中長期的な課題として、直ちに検討に着手しても時期尚早ということはないように思います。
なお、もし、他施設にエントリーすることを検討する場合は、同一都道府県内にとどめることが無難です。活動範囲が2都道府県以上になれば、公益法人制度改革の監督官庁が都道府県知事ではなく中央省庁になるため、公益財団法人の認定やその後の報告等の手続できやその後の報告等の事務処理が複雑になることを覚悟しなければなりません。
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A市の外郭団体であるA財団の話です。
A財団はA市内の公園、文化ホール、観光物産施設など5施設の指定管理者に選定されています。(指定管理期間が3年〜5年とバラバラなので、毎年いずれかの施設で公募があります。)
A市には大規模な事業所があり、ここからの税収により、比較的豊かな自治体でしたが、平成20年8月のリーマンショックで大幅に税収が落ち込み、財政が悪化していました。これに危機感をもったA財団は、21年6月に公募されたA市に隣接するB市の公園の指定管理者(民間企業が管理運営していました)に応募し、見事、指定管理者に選定されました。
その後、21年9月に今度は、A財団が指定管理者となっている観光施設の指定管理者公募が始まりました。A市の財政状況の悪化を反映して、観光物産施設の指定管理料は、それまで年間約3,000万円だったのが、今回は、指定管理料上限が 2,400万円と20%も削減されています。(指定管理期間は3年)
ここで、A財団幹部は、「観光物産施設の指定管理者には応募しない。」という決断を行いました。このような決定ができたのは、隣接するB市で公園の指定管理者に選定されたからで、これがなければ、職員の雇用を確保するために赤字でも泣く泣く指定管理者に応募しなければならなかったでしょう。この意味で、A財団の経営戦略は非常に的を得ていたということが言えるのではないかと思います。
これまでは、自治体が外郭団体を守ることが多かったと思いますが、自治体の財政状況がそれを許さなくしつつあります。私の感覚で言うと、自分たちの給料がカットされているのに外郭団体向け予算を確保しようとする職員はほぼゼロと考えて間違いありません。本音では、「自分たちの給料までカットされているのだから外郭団体はもっと辛抱すべきだ」と考えている職員がほとんどでしょう。
別に指定管理でなくてもよいのですが、外郭団体も、今までの仕事を守るだけではなく、積極的に業務の範囲を広げていくという姿勢が必要な時代になったのではないかと思います。
前回のA財団の話には続きがあります。A財団が応募しなかった観光物産施設は結局1社(団体)も応募がありませんでした。すると、応募締め切りからわずか10日後に、A市の担当課長がA財団を訪れ、「非公募で指定管理者に指定するので、年間2,850万円で観光施設の管理運営を行ってほしい。」とのオファーを行いました。たった10日間で、指定管理料の上限が、年間450万円も上がったのです。
これには、理由があります。自治体職員にとって、公募で1社(団体)も応募がないというのは最悪の事態です。現指定管理者さえも応募しないということはそもそもの条件設定が間違っていたということですから、担当者には大きな責任が発生しますし、ほとんどの場合、議会に「今議会に指定管理者指定の議案を提出します。」と事前説明しているはずですから、もし議案が出せないとすると、自治体幹部職員の責任問題にも発展しかねません。
したがって、みなさんもご存知かもしれませんが、昨年、愛知県内のある市で、指定管理に応募していない業者の下書き文書を正式な事業計画書と無理やり認定し、指定管理者に選定するというような不祥事が発生します。業者から金品を一切受け取っていない市の職員がなぜこのようなことを行うのか不思議に思う方もたくさんいらっしゃるでしょうが、応募がゼロという事態を避けたいという気持ちは、実は、私にはよく理解できます。(もちろん、決して認められる行為ではありません。)
A市の場合も、最低限、議会に指定管理者指定議案が提出できないという事態は避けたいと考えたのでしょう。ですから、わずか10日間で、年間450万円の指定管理料増額を財政当局などと調整し、A財団にオファーを行ったのだと思います。A財団は、さらにA市と交渉し、指定管理期間を3年から5年に延長すること、自治体が負担する修繕費の区分を50万円以上から30万円以上に引き下げることを条件にA市観光物産施設の指定管理者になることを了承しました。指定管理料が今までの約3,000万円から5%減少し、A市の顔を立てた形にはなりましたが、実質的には、A財団が非常に優位な立場で交渉を進めたことは明らかです。
このことでわかるように、財団が業務を拡大し、公募の条件が悪ければ、現指定管理者にもかかわらず当該施設の公募に参加しない可能性があるという状況は、自治体担当者に大きなプレッシャーを与えます。おそらく、問答無用で指定管理料の上限を大幅に下げられるというような事態は防止できるでしょう。今、管理運営を行っている施設以外でも指定管理者に選定される、あるいは指定管理者以外で新たな収益源となる事業を行うことは、現在の指定管理業務にも大きな波及効果をもたらすのです。
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文部科学省が年間3,000万円以上の公的研究費を受ける研究者にアウトリーチ活動、すなわち、学校等での特別事業やシンポジウム・公演などを義務づける方針を決定しました。(2010年6月23日付毎日新聞など)
これは、科学館はもちろんですが、文化施設や体育施設などの指定管理者のみなさんにとっても朗報です。つまり、大学や研究機関の研究者が無償(旅費等は必要だと思います)で公演を行ってくれるわけで、自主事業で活用しない手はありません。公的資金を受ける条件として義務づけされていますし、研究評価の対象になるわけですから、こちらから会場と参加者を確保すると提案すれば、基本的には「渡りに船」と協力してくれるはずです。
公演テーマも、自主事業なのですから、文化施設は「地域の歴史や文化」、体育施設は「健康や体力づくり」というように施設種別にとらわれる必要はありません。「大学・研究機関と協力して、地域の住民に役立つ情報や興味深い情報を提供することにより、施設の認知度を高める」という理屈を説明すれば、自治体担当者が開催を認めないということはまずないと考えて構いません。
「大学や研究機関は敷居が高い」と考えている指定管理者の方もたくさんいらっしゃると思いますが、今回の文部科学省の方針は、このような方にとっては大きなチャンスです。大学や研究機関を管理運営に巻き込むことができれば、次期指定管理公募でもプラス材料になります。
なお、個別の研究者に接触する必要はありません。研究者自らが公演先等を探すことは、ほとんどなく、大学や研究機関の事務局が行うことになるはずなので、大学や研究機関の事務局に行き、施設の概要を説明して、「公演等を行う場合は、ぜひこの施設を活用してほしい。」と依頼するだけで十分です。大学事務局も自分たちが公演先を飛び込みで開拓するよりは、オファーがあった先にアプローチする方が楽なので、かなりの確率で、研究者を紹介してもらえると思います。
友人に誘われ、代々木体育館で女子バレーボール世界選手権(日本VSブラジル)を見に行きました。正直、バレーボールにそんなに興味があるわけではないのですが、選手の気迫がひしひしと伝わってきて、ゲームが終わる頃には声が枯れるほどのめり込んでいました。悔しい逆転負け(あと1点取れば勝っていたマッチポイントで点が取れなかった)を喫して呆然としているはずなのに、スタンドに一礼して出て行った竹下選手、木村選手らには観客席が総立ちで拍手をおくっていました。
そして、次の日は、これも友人に誘われ、サッカーJ2のゲームを見に行きました。こちらは、応援しているチームが勝ったのですが、率直に言って、内容には緊迫感がなく、いかにも消化試合というゲームに見えました。
サッカー選手が決して手を抜いているわけではなく、真剣に戦っているはずです。けれども、観客から見ると、だらだらとしたゲームに見えているのも事実で、これは、プロなのですから、ゲームを見る側ではなく、プレーする側がかなんらかの改善を行う必要があると思います。
話は変わりますが、施設の管理運営も全く同じような気がします。職員のみなさんは、一生懸命努力していると思いますが、それがお客様に伝わっているかどうかは別問題で、伝わっていないとすれば、もっともっと伝える努力や工夫が必要です。
このように考えると、イベントや自主事業の企画も別の発想が出てきます。例えば、最近、よく実施されているバックヤードツアー(舞台裏の機器など一般の利用者が普段立ち入れない場所の見学会)は、単に珍しい場所を見せるだけではなく、「照明、音響技術の難しさや苦労」を紹介するという観点もありうるのではないでしょうか。
お客さまにみなさんの努力を感じてもらい、施設のファンが増えて、利用者数も増加するという仕組みを構築できれば、それは指定管理者として、自治体から高い評価を受けることは間違いありません。
最近、よく公益法人制度改革に関するご質問をいただきます。
ご存じだとは思いますが、現在の財団法人、社団法人は平成25年11月末までに、公益財団法人・公益社団法人または一般財団法人・一般社団法人に移行手続きをしなければ自動的に解散になってしまいます。
平成25年11月末まではまだまだ時間がありますが、書類作成に手間がかかることや、万一、申請が認められない場合の再申請の時間確保を考えると、そろそろ手続きに入りたいと考えている方が増えているのだと思います。
いただく質問の多くは、公益財団(社団)、一般財団(社団)のどちらを選択するかです。解説書では、公益財団(社団)になるメリットとして税制上の優遇措置が紹介されていますが、普通の財団(社団)が計上できる利益はわずかな額で、法人税納税額も微々たるものです。ですから、税金を減らすためだけに、手続きが煩雑でしかも毎年の役所の厳しい監督下に置かれる公益財団(社団)を選択する必要性が本当にあるのかという疑問です。
私も正直、税制上の優遇措置だけで公益財団(社団)を選択するほどのメリットはないと思っています。(ただし、事業所税が課税される施設の指定管理者となっている場合は例外です。事業所税については、別途、ご説明するコラムを設けます。)
ただ、指定管理業務とは別に、なんらかの事業で自治体から補助金を受けている(受ける可能性のある)財団(社団)は、公益財団(社団)を選択すべきです。
補助金は、予算を計上した段階で補助金交付先が決まっているものと、予算を執行する段階で公募により交付先が決まるものの2種類に分かれます。この2種類は、契約で言うと、前者が随意契約、後者が一般競争入札ということになるのですが、自治体の外郭団体や財団(社団)が受ける補助金のほとんどは、予算計上時に交付先が決まっている、すなわち、その補助金予算が他の企業等に交付される可能性がない非常に有利な補助金です。
自治体から見ると、一般財団(社団)は民間企業と同じ扱いです。このため、一般財団(社団)を選択してしまうと、このような有利な補助金を受けることがほぼ不可能になり、公募で選定されるしか補助金を受けるチャンスがなくなってしまいます。したがって、補助金を受けている財団法人・社団法人の方は、税制上の優遇措置ではなく、これからも補助金を受け取りやすくするために、公益財団(社団)を選択する必要があるのです。
なお、今までの説明と全く関係ないのですが、23年度に認可手続きを行い、24年4月から、公益財団法人・公益社団法人に移行しようとすると、24年4月1日が日曜日であるため、法務局で登記ができません。
したがって、4月2日に登記することになるのですが、これでは、24年度は、4月1日だけの「旧財団法人・社団法人分」の決算書類と4月2日〜25年3月末までの「公益財団法人・公益社団法人分」の決算書類を作成する必要があるため、事務続きが非常に煩雑になります(特に人件費や家賃等の関係で4月1日に交付決定を受ける補助金がある場合はややこしい問題が発生する可能性があります。)。
24年度に特に大きなイベントや指定管理者公募などがない財団法人、社団法人の方は、23年度にある程度準備して、24年度に認可を受け、25年4月1日から移行するというのが、事務的にはスムーズに進むのではないかと思います。
報道によると、熊本県内では、避難所に指定されていない施設の駐車場でも、たくさん被災者の方が車中避難しているようですが、みなさんの施設でも同様のことがあり得ます。つまり、万一の場合、駐車場がある公の施設には、避難所に指定されていなくても、被災者が避難してくる可能性を想定しなければならなくなったということです。
大規模災害発生時には、自治体の対応が混乱しがちで、避難所以外に避難している被災者の対応などは、どうしても後手に回りやすい傾向が否めません。つまり、避難所に指定されていない施設への自治体の対応は後回しになる可能性が高く、指定管理者が対応しなければならない業務範囲が増大する (=指定管理者の負担が大きい) 傾向があるのです。
避難所に指定されていない施設の指定管理者の多くは、防災計画 (危機管理マニュアル) の中で、大規模災害発生時の被災者受け入れまでは規定していないと思いますが、特に、広い駐車場やグラウンドがある施設は、真剣に検討すべき時期に来たように思います。
今回の地震でも、駐車場で車中避難している方については、人数・年齢の把握方法、情報の伝達方法 (館内放送が届かない)、健康管理 (エコノミー症候群の防止) などで、相当苦労しているようです。また、同じフロアーで過ごしていれば、自然と生まれる「譲り合いの精神」や「一体感」が車中避難では乏しく、あらかじめ、詳細にルールを定めないと、被災者同士のトラブルが多発し、この対応に忙殺されて、その他の業務に支障が生じる事態にもなりかねません。
避難所の運営が自治体の業務であることは間違いありませんが、行政の代行者である指定管理者も決して無関係ではなく、東日本大震災以降は、むしろ、指定管理者に積極的な対応を求める傾向が強まっています。まずは、熊本県や大分県の被災者のみなさんのためにできることを行って、そして、少し落ち着いてきたら、万一の大規模災害発生時の自らの施設での被災者受け入れの想定について、ぜひ検討してみてください。(2016.4.19)
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東日本大震災のような未曾有の大災害であっても、施設管理者は、最善の判断を迅速に行う責務があると理解しなければならないこの判決を、「厳しい」と感じる方もあると思います。現に、「机上の空論」というような意見を述べた施設管理者の方がいたと聞いていますが、この判決に目を背けるのではなく、判決の趣旨に少しでも合致した対応を考えるというのが、指定管理者としての正しい姿勢だと私は思います。
津波到来の恐れがある児童館、保育所、障がい者施設などの指定管理者のみなさんも、避難場所は定めていると思いますが、順路を定めているでしょうか。また、実際に避難するにあたって、避難場所やその順路の安全性を、誰がどのような手法で確認するか決まっていますか。さらに、避難場所や順路が安全でないと判断した場合の代替手段(代わりの避難場所やそのアクセス方法など)を定めているでしょうか。(保育所や障がい者施設で、送迎がある施設は、送迎中に津波警報が発令されることも想定する必要があります。)
大地震でどこが被害を受けるはわかりません。避難場所や順路をひとつしか想定していないとすれば、使用(通行)できないことが判明した段階で、代替場所(道路)を検討しなけばなりませんが、これでは、今回の判決と同様、「遅い」と認定される可能性があります。
今回の判決は、原告・被告が控訴し、高等裁判所で再度、審理が行われることになりますが、「高裁の判決を待って」などと考えずに、できることを考えてみてください。できれば、避難場所やその順路を複数想定し、最初のプランが崩れても、「2番目」、「3番目」のプランが想定されているという形にすべきなのではないかと思います。(2016.11.16)
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私の知る限り、一番多い事例が、公園等の「遊具安全確認ボランティア」です。もちろん、指定管理者が日常点検、定期点検などを、少なくとも、自治体から求められている水準で実施します。その上で、遊具の安全をチェックするボランティアを募集し、住民が散歩・通勤する際などに、チェックしてもらうことにより、点検の目を増やし、安全水準を高めています。
遊具安全ボランティアに遊具のチェックリストを渡したり、ボランティア向けの点検研修会を開催したりして、ボランティアによる点検の実効性を高めている指定管理者もあります。
「大げさな住民が遊具安全確認ボランティアになって、いろいろ文句を言われるのは困る」という担当者の方もいらっしゃいますが、前回のコラムで記載したように、原則として、ボランティアには「平等利用」の適用がありません。「募集」ではなく、「管理運営に理解のある方だけに依頼する」という手法でもボランティアを活用することは可能ですので、「今まで以上に安全水準を高める」という観点で検討する余地もあるのではないでしょうか。(2017.3.12)
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最近、少しずつ増えていると感じるのが指定管理者同士の連携です。つい、先日も、神奈川県内の指定管理者2法人が連携し、互いに、管理運営していない施設でイベントを開催したとの小さな記事を見つけました。
新規事業を実施する場合、これまで実施した経験のある事業の何倍もの手間がかかります。もし、当該指定管理者が実施しようとしている新規事業について、他の指定管理者がノウハウを持っているのであれば、任せた方が効率的でしょう。上記記事の指定管理者とは全く関わりがないので、詳しい事情は知りませんが、おそらく、利用者サービスの向上に加え、持っているノウハウを相互に提供しあうことで、新規事業を企画・実施する手間を軽減したのではないかと思います。
このほかにも、私が把握している事例では、災害発生時に相互に応援する協定を締結している指定管理者があります。具体的には、全国(北海道、中部地区、近畿地区、中国地区、四国地区、九州地区)の7法人が協定を締結し、熊本地震のような大規模災害が発生した場合に、災害発生地以外の地区が、人員派遣や募金集めなどの応援を行うことを定めています。
熊本地震が発生した後の昨年の指定管理者公募で、ある全国規模の指定管理者は、事業計画書に「万一、大規模災害が発生した場合、全国の本社・支店から、応援の人員を派遣して災害対応に当たることが可能です。」という趣旨の記載をしていました。地元にしか拠点がない中小企業や公益財団法人等が、このような記載に対抗するためにも、上記のような災害時の相互応援協定は、意味があるのではないかと思います。
また、連携の輪を広げることは、公募にもメリットがあります。連携は、お互いの信頼関係が大前提です。したがって、指定管理者が変わってしまうと、いままで機能していた連携関係が崩れる可能性があります(=「新たな指定管理者とは連携できない」 と相手側が判断する可能性があります。)。このため、自治体から見ると、連携がうまく機能しているほど、指定管理者を代えにくくなるのです。
今後も、少しずつでしょうが、指定管理者同士の連携が増えてくると思います。指定管理者同士の連携は、公募時に、お互いに敵になる可能性があるなどの難しい問題もあり、乗り越えなければならない障害も少なくありません。けれども、メリットもあり、全国的なトレンドになる可能性もあるので、難しいからこそ、早い段階から、少しずつ検討してはどうでしょうか。
(2017.5.8)
令和時代が始まりました。史上初の10連休で、みなさん多忙であったと思います。連休明けはしばらく楽をしたいという気持ちはよく理解できますが、多くの人々が連休で散財して、特に、公園や体育施設などは、しばらく足が遠のくのではと言われています。5月中下旬に大きな反動がないようにだけは留意してください。
ところで、令和元年にはラグビーワールドカップ、令和2年には東京オリンピック・パラリンピックと大きなスポーツイベントが国内で続きます(加えて、関西地区では令和3年にワールドマスターズゲームが開催されます。)。
これに関連して、最近、「自治体からラグビーワールドカップや東京オリンピック・パラリンピックに関連した事業を実施してほしいとの要請を受けたが、どのような事業を実施すればよいかよくわからない」という趣旨の質問を何件かいただきました。
今さら、ワールドカップやオリンピックに出場するような選手を育成する時間はありません(そのような役割を求められている施設もほとんどないはずです。)。
では、どのような理屈で実施すれば自治体が納得するのかということですが、国外でも世界
的規模のスポーツ大会が開催されると、国内のスポーツへの関心が高まります。ましてや今回は、国内で開催されるのですから、リオデジャネイロやピョンチャンでのオリンピック以上に「スポーツをやってみたい。」という住民が増えることが想定されますので、「スポーツへの住民の関心の高まりを受け止める事業を実施する」ということを説明すれば、ほとんどの自治体担当者を納得させることができるはずです。
ピョンチャンオリンピックでは、国内でも銅メダルを受賞したカーリングへの関心が高まったように、具体的には、オリンピックで活躍することが想定される種目について、一般住民向けやジュニア向けのスポーツ教室を開催する(または開催回数を増やす)ということでよいのではないかと思います。(別に、講師が元オリンピック選手・コーチではなくてもかまいません)
なお、全く別の話ですが、東京オリンピック・パラリンピックでは、日本全国の多くの市町村で、参加国選手の合宿や練習試合などが行われる関係で、夏は自治体職員が非常に多忙になります。このため、令和2年に指定管理の公募がある施設の中には、前回の公募とは大幅に日程が変更される(例えば、前回8月であった公募が5月に前倒しされる)ケースがかなりあるのではという話が自治体関係者から聞こえてきます。令和2年に公募がある施設の方は、公募が早まる可能性を想定しておいた方がよいと思います。(2019.5.6)
毎年同じことを記載するのですが、夏期は多忙で更新ができませんでした。ようやく落ち着いてきましたので、サイトの更新作業を再開できるようになりました。また、1か月に1度くらいは、新たなコンテンツを掲載しますので、時間があるときにご一読いただければ幸いです。
新型コロナの感染者数や重症者数が10月中旬以降急速に減少しており、様々な活動の
再開、制限解除等が進んでいます。ただ、指定管理については、施設の通常業務はともかく、教室事業・イベント等は準備が必要ですから、すぐに例年の状況に戻すのは難しいのが現実だと思います。
けれども、ある体育施設の指定管理者は、今年の11月に、例年以上に教室事業やイベントの実施を計画しています。つい最近、その指定管理者の責任者の方とお話しする機会があったのですが、11月に実施する教室事業、イベントは、新型コロナの第5波のピークであった今年9月に準備を開始したとのことでした。
責任者の方によると、「以前は、感染者数が減少した時期に、教室事業やイベント等の準備をはじめていたので、いざ実施する際になると、次の拡大期が到来し、中止・縮小せざるを得ない状況になってしまっていた。発想を転換し、感染の拡大期に準備を行えば、実施するころには、感染が沈静期に入り、教室事業やイベント等が実施できるのではないかと考え、あえて、拡大期に準備を開始するよう指示した」 とのことでした。(もちろん、オンライン等も含め、準備は、感染防止対策に万全を期して実施しています。)
今後も、新型コロナには、拡大期と沈静期があると多くの専門家が予測しています。ワクチン接種も進み、重症化に至る割合は低下しているので、拡大期はともかく、沈静期には、ある程度、以前とあまり変わらない形で教室事業やイベント等が実施できるのではないかと思います。私は、「with コロナ」 と言えば、感染防止対策の徹底やオンラインでの事業実施しか思い浮かびませんでしたが、このような「with コロナ」 もあるのだと感心しました。(2021.10.25)
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令和4年度の指定管理者の公募では、応募が「ゼロ」であった施設が結構ありました。おそらく、エネルギー価格を中心とする物価高騰がいつまで続くかが不透明な中で、現指定管理者までもが応募を断念したというケースがほとんどであると考えられます。
当社にも何件かあったのが「指定管理の実績がほしい。応募者がない再公募の施設であれば、選定されるの可能性が高いので、多少、指定管理料が厳しくても応募したい」という相談でした。
けれども、私は応募しないようにアドバイスしました。理由は、再公募される施設のほぼすべてで、指定管理者が内定しているからです。自治体担当者にとっては、応募者「ゼロ」で再公募になること自体が由々しき事態です。ましてや、万一、再公募で応募者が「ゼロ」になるようなことは絶対にあってはなりません。このため、再公募になった時点で(ほとんどの場合は)現指定管理者と水面下で協議・交渉を行います。
現指定管理者が応募しない理由のほとんどは物価高騰、言い換えると、自治体が示した指定管理料の上限が低すぎるからです。したがって、指定管理料の上限をどの程度増額するか協議・交渉し、合意が得られた段階で、再公募を開始します。もちろん、水面下で合意した者を必ず指定管理者に選定しなければならないわけではありませんが、自治体がお願いして応募してもらっているという形になりますので、現実問題として「選定しない」という結論になるケースはまずありません。
このような事情で、再公募の施設は、自治体と水面下で協議・交渉している者(ほとんどの場合は、現指定管理者)が指定管理者に選定されることが100%に近い確率で内定しているのです。
令和5年度も、現在のところ物価高騰が続いているので、応募者が「ゼロ」の施設が結構あるかもしれません。「指定管理者の実績がほしい」という法人・団体の方は、再公募の施設を狙うのではなく、できる限り多くの施設で(再公募ではなく)最初の公募での応募することを考えてください。運頼みではありますが、応募して、もし、現指定管理者が応募しないという状況になれば、かなりの確率で選定されるからです。(2023.1.12)