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自治体の監査は、監査委員が実施しています。監査委員は民間選出の委員と議員代表の委員がいて、形式的には監査委員が監査を実施することになっていますが、実施的には、監査事務局職員(つまり自治体職員)が監査を行っています。身内が監査事務を行うのでは、どうしても甘くなってしまうということで、平成10年度から「包括外部監査」という制度が導入されました。(ただし、基本的には都道府県、政令指定都市、中核市のみに導入されています。)
この制度は、包括外部監査人(弁護士、公認会計士、税理士)が毎年テーマを定めて、自治体の業務を包括的に監査するもので、指定管理者制度がテーマになる例もかなりあります。
指定管理者制度が包括外部監査のテーマになった場合、現場であるみなさんの施設にも包括外部監査人が来て監査を行います。これは、地方自治法に基づく監査であり、みなさんが拒むことはできません。担当課のモニタリングではないので軽く考える指定管理者もたくさんいらっしゃるのですが、包括外部監査の結果は、知事(市長)への報告書という形でマスコミ等にすべて公表されるため、その反響はモニタリングや出納監査などの比ではありません。場合によっては、指定管理者としての評価を大きく下げるという結果になりかねないので、これこそ万全の態勢で立ち向わなければなりません。
包括外部監査制度は、理想はとてもすばらしいのですが、運用上は問題点があります。それは、特に地方では、業務を担う人材がなかなかいないことです。包括外部監査人に就任すると、業務に多くの時間を割かれます。自治体からの報酬は限られていますから、なかなか引き受けてくれる弁護士や公認会計士等がいません。しかも、法令で連続3回までしか同一の包括外部監査人と契約できないという制限やその他もろもろの制限があって、包括外部監査人を探すのに苦労しているというのが、多くの自治体の実態です。 全部が全部とは言いませんが、少なからず、仕事があまりない(仕事の評価が低い)弁護士や公認会計士等が選定されるケースがあるのです。
このような弁護士や公認会計士等の多くは、派手な成果を上げる、つまり自治体の業務を厳しく批判することで注目を集め、ひいては自らの仕事を増やしたいと思っています。このため、最初から結論ありきのような監査が行われることが多々あり、このような包括外部監査人に当たってしまうと、大災難です。
ある包括外部監査の報告書の一部を抜粋しました。
事例1
「現地説明会に十分な時間を確保し、またその日程を複数回設け、さらにはその他施設や経営状況に関する具体的な資料を提供するなど、十分に配慮すべきである。」
「申請書類等の提出期限は、募集要項公表後1ヶ月余りとなっており、この日程も極めて厳しい。」
この2つの指摘は、文章だけ読めば、納得するかもしれませんが(これが恐ろしい)、弁護士や公認会計士の報告書としては明らかな違和感があります。通常、弁護士や公認会計士は「最高裁の判例によると・・・」とか「○○会計基準によると・・・」というように指摘の根拠を示します。ところが、このような表現は全くなく、「十分に配慮すべきである。」とか「極めて厳しい。」とかいう包括外部監査人の感想をそのまま指摘事項にしています。
少なくとも、「募集開始から締め切りまで、全国平均は○○日であるが、○○県では、1か月と全国平均の約半分しかない。」というように根拠を示すのがプロの指摘だと私は思います。(ちなみに、統計は取っているわけではありませんが、公募から締め切りまで1カ月というのは全国的に見れば平均値より著しく短いとまでは言えないと思います。)
事例2
「(指定管理者の)収支(利益)が0というのは明らかに不自然であった。そこで、指定管理者及び所管課に確認したところ、決算書の内容が正確であり、事業報告書は管理費の一部を水増しして収支を一致させるように調整した内容となっているとのことである。このような取り扱いは、事業報告書の内容が事実に反するものであるという点で極めて重大な問題がある。
さらにいえば、実際には本施設の管理運営については相当程度の利益が出ているにもかかわらず、その事実を県が把握できないこととなり、今後の指定管理料の適切な設定に支障を来す。加えて、今後指定管理へ新規に申請を検討しようとする者に対して事実に反する情報を与え、その参入を妨げる結果にもなりかねない。」
指定管理者の収支報告書に関する指摘です。利益額は企業秘密の最たるものです。指定管理料の原資は税金ですが、それを根拠に何もかも報告すべきだというのは違います。指定管理料は基本的には、公共事業と同じで仕事に対する対価の支払いです。公共事業では受注企業がどれくらいの利益があったかを報告する必要はありません。ただ、指定管理業務の報告には「収支」という項目があり、報告書を徴収しなければならないので、どこまで報告してもらうか、自治体職員は苦労しています。
おそらく、多くの自治体で、例えば「本社経費」とか「企画料」とかいう項目(会計的には「本社勘定」)を設けて、指定管理における本社寄与分(本社のバックアップに対する対価)を収支に計上し、直接の利益額を表示しないようしてもらっています。それを「水増し」というのは厳しすぎると個人的には思います。(これは個人の感想です。)
それと、利益額をゼロして報告することが新規参入の妨げになるというのは明らかな言いがかりです。私の知るかぎり、99.99%の企業は仕事を受ける場合に、前の会社の利益額ではなく、今回の業務内容と対価をもとに仕事を受けるかどうか判断します。みなさんも「前の会社はいくら儲けたのですか。」などという質問をする業者に出くわした経験はないでしょう。
大切なのは業務の内容・範囲をきちっと説明することであって、利益額を公表することではありません。むしろ、逆に、「利益額が公表されるなら、参入できない」という企業の方が多いはずです。
このようなことは、包括外部監査人も十分承知しています(わかっているから、「結果になりかねない。」というあいまいな表現にしています。)。十分承知していますが、注目を集めるために、言いがかりのような指摘を行っているのです。つまり、最初から結論が決まっていて、どんな説明・反論を行っても無駄というが最大の悲劇なのです。
ちなみに、この報告書はマスコミで大きく取り上げられました。報道では「結果になりかねない」という表現が「参入を妨害している」などの断定型になっています。これも計算ずくで、「自治体を厳しく断罪した」と「参入を妨害すると断定はしていない」という立場を使い分けられるようにしているのです。
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