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1年が終了すると、自治体に報告書を提出する必要があります。この中で、特に民間企業からよくご質問をいただくのが「収支報告書」です。要するに1年間の収支を報告するわけですが、ありのままに報告すれば、利益がいくらあったか、また、警備、清掃などの外部委託業者といくらで契約したかなどの企業秘密を明らかにしなければなりません。
これが自治体の内部資料にとどまるなら、百歩譲って、やむを得ないかもしれませんが、情報公開や議会答弁などで外部に公になることも十分あり得るわけで、どうして明らかになるリスクがあるのに企業秘密を報告しなければならないのかという趣旨のご質問がほとんどです。
率直に言って、ごもっともなご意見だと思います。指定管理料に住民の税金が使われていることは事実ですが、例えば、公共事業を請け負った企業が公共事業で得た利益額を自治体に報告したりはしていません。自治体職員だって、給料の原資は税金ですが、給料の使途や余った額などを報告する義務はありません。税金を使っているからと言ってすべて使途を明らかにする必要は全くなく、指定管理料は公共事業や職員給料と同様、仕事に対する対価ですから、結果を出せば、資金使途や利益額は関係ないというのが正論です。
ただ、現状では、ほとんどの自治体が指定管理料の使途について、報告を行うよう指定管理者に求めることを要項や仕様書で定めており、現実問題として、自治体からの提出要求を無視することはできません。では、どのように解決すべきなのでしょうか。
■支出で利益の調整する(「配賦」、「内部取引」の活用)
ありのままの利益額だけは報告したくないというのが、多くのみなさんが一番考えていることだと思います。これを実際の額から調整して、当たり障りのない額で報告することが一番現実に即した解決方法だと思います。
収支報告書は、収入と支出を報告するわけですが、収入(指定管理料、利用料金、自主事業収入など)はありのままを報告するしかありません。問題は支出なのですが、これを、虚偽でない範囲で拡大解釈し、利益幅を調整することは可能です。
たとえば、施設の管理運営は、決して施設に常駐する職員だけが実施しているとは限りません。本社や本部で、総務関係(給料、社会保険、福利厚生、採用事務など)、研修関係、危機管理対応などの事務を実施している場合はそれらに要した人件費、光熱水費、消耗品費は施設の運営経費として計上しても問題もありません。(会計学では「配賦」と言います。)
また、外部委託業者の選定や契約を本社や本部で実施しているのであれば、それらに要した経費も計上できますし、例えば本社で100円で購入した文房具を120円で指定管理部門が購入するという取引も企業会計原則上では認められています。(最後の例は、会計学では「内部取引」と呼ばれ、物品購入に限りません。ビルメンテナンスなどの委託契約でも理論上は可能です。) このような方法で支出を増やすことで、利益額を調節して報告することは十分可能なはずです。
■支出で利益の調整する。(「特別積立金」の活用)
あまり例はないかもしれませんが、前章で説明した方法ではまだ利益が多すぎる場合や、財団等で指定管理施設内に本部があり、「配賦」や「内部取引」などのテクニックが使えない場合などは、特別積立金を積み立てる方法を検討してください。
これは、例えば、創立○○週年特別事業などが何年後かに予定されている場合に、それにかかる経費の一部を当該年度から積み立てる制度です。勉強不足で民間企業の場合はわからないのですが、財団の場合は財団の規模等によって決まる一定額までは税務上も損金算入できます。これを積み立てることにより、当該年度の支出を増やすことができ、利益を調節することができるというわけです。
■理屈が大切
大切なことは、モニタリングや外部監査等で、議論になった場合に、虚偽報告ではなく処理の解釈の問題だと説明できるような最低限の理屈を用意しておくことです。
例えば、現場でなく、本社にあるパソコンも「報告書作成などの指定管理業務に使用するために購入した」と説明すれば、指定管理料の支出として説明することはぎりぎりセーフでしょうが、本社とは異なり指定管理業務には関係ない○○営業所においてあるパソコンを指定管理料の支出として報告することは虚偽報告と判断されてしまいます。税金でも同じですが、虚偽報告と処理上の解釈の違いとは天と地ほどの差があるのです。
■「警備」や「清掃」の契約額を調整する。
そのほかにも収支報告書には「清掃」や「警備」などの金額を記載する項目がある場合があり、清掃や警備は通常1社と契約しているだけでしょうから、ここに金額を記入するということは、当該企業との契約額が明らかになってしまうということになります。
明らかになってまずいのは、相場よりも安い金額で契約している場合でしょうから、前述した利益と同様、虚偽報告にならない理屈をつけて、金額を増やす方法を考えるしかありません。
通常、保守点検(維持管理)はエレベータ、空調など設備種別に分けて複数の業者と契約していると思います。つまり、保守点検業務は全体の金額が明らかになっても、また、少しくらい全体額が減少しても、警備や清掃に比べればダメージは少ないでしょう。
例えば、空調の保守点検には契約内容に「洗浄」や「ダスト処理」など清掃と解釈できる業務内容が含まれていると思います。見積書の「洗浄」や「ダスト処理」などの額を保守点検費から清掃費に振り替えることで、ダメージを最小限に抑えることは可能です。
また、なかなか保守点検から警備に振り替る項目がないという場合もあるかもしれませんが、その場合は、人件費の一部を振り替えるという方法もあります。つまり、職員も一部は見回り業務を実施しているので、警備に従事した相当分を人件費から警備費に配賦したという理屈にするわけです。正直言って、人件費の配賦を自治体が認めるかどうかは微妙で、「修正」の指導はあるかもしれませんが、いきなり「虚偽報告」と判断されることはないのでやってみる価値はあります。
■割戻(リベート)はお薦めできません。
会計上の「割戻」を使って、収支報告書を調整する方法も考えられます。例えば、「警備業務はいったん100万円で契約し、翌年度に20万円バックしてもらうことで、収支報告書には100万円と記載するけれども、実質は80万円でした」というやり方です。
正直言って、あまりお薦めできる方法ではありません。まず、「割戻」は、たくさん購入してくれたから値段を下げるというように、後で値段を下げる何らかの理由があることが本来的には必要です。また、20万円を未収金に計上しなければ、税務署に脱税と解釈されるリスクがありますし、未収金に計上すれば、モニタリングや外部監査で発覚する可能性があります。
「割戻」は、会計上は認められている処理ですが、世間では「リベート」と呼ばれ非常にイメージが悪いので、明らかになった場合は、「虚偽報告かどうか」という以前に社会的に非難を受ける可能性が高いので、避けた方がよいと私は思います。
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