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「安全・安心の確保」の重要性を強調する記事が続きました。ただ、「安全・安心」が最優先されることは当然ですが、「安全・安心」であればよいのかというとそれだけではありません。
以前、横浜市のあるホールで某アイドルのコンサート開催中に3階最前列の観客が2階に転落するという事故がありました。一般にポップスやロックコンサートでは観客がスタンディング状態になっています。2階や3階部分の観客が興奮してスタンディング状態でオーバーに飛んだり跳ねたりすると、転落してしまうリスクが発生するのです。
これについて、ある指定管理者向けのサイトで次のような記述がありました。事業計画書作成のポイントとして「当社では、来場者の安全確保のために公演中2階席及び3階席の最前列はスタンディング禁止とします。このことを公演開催前に利用者に徹底し、公演当日には、来場者向けの表示・アナウンス、監視員の配置などを義務付けます。」というように記載することを勧めているようです。
趣旨は理解できないわけではないのですが、私の考えは違います。コンサートでスタンディング状態になる時間帯は一番盛り上がっている状態です。そもそもこのような状態のときに、たまたま2階、3階の最前列の席のチケットを入手した利用者だけを一律にスタンディング禁止にすることは利用者の心情を全く無視したやり方です。他の方法で安全確保ができないかどうかを検討して、どうしても無理だという場合に断腸の思いで実施する対策で、積極的に実施する安全対策でないように思います。
現に、2階、3階の最前列でスタンディングしても安全に利用できる施設はたくさんあります。これらの施設のハード的対策やソフト的対策を十分に研究して、これらを取り入れられないかどうかをまず検討すべきでしょう。
また、最近は、オールスタンディング状態になった時に舞台が全く見えなくなる小さな子どもに配慮して、2階、3階の最前列をスタンディングができない「親子席」や「子ども席」にするよう主催者に指導している施設もあるようです。はじめからスタンディングできない席として販売すれば、スタンディングを希望しない利用者しか買わないので、利用者の満足度が下がることがないとの発想で、これも問答無用のスタンディング禁止よりはずっと利用者の理解が得られる安全対策でしょう。(もちろん、監視員は必要です。)
一律の禁止行為はわかりやすくよい面があることは事実ですが、リスクも発生します。東京のある施設の3階最前列はスタンディング禁止ですが、コンサートが盛り上がるとほとんどの観客が立っており、監視員が注意しても座りません。このような状況で万一、転落事故が発生すれば、事業計画書にスタンディングを禁止すると記載した指定管理者も当然管理運営責任を問われることになります。
最近は指定管理者の審査委員会に利用者代表が加わることが多くなりました。利用者代表に高い評価をもらうためにも、みんなが楽しく利用できる管理運営を提案する必要があります。安全・安心の確保はもちろん最優先ですが、利用者を無視した安全対策は少なくとも利用者代表からは高い評価を得らません。あくまで、利用者の立場に立って、利用者の安全確保と快適な施設利用を最大限両立させることを追求するという姿勢が指定管理者に求められていると私は思います。