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あけましておめでとうございます。適宜、内容を追加していきたいと考えていますので、時間があるときに読んでいただければ幸いです。
岸田総理のスローガンである 「成長と分配」 に基づき、今年は、「賃上げ促進税制の拡充」、「看護師・保育士・看護師の賃上げ」、「大企業等に対する取引先中小企業の賃上げ分の購入価格転嫁の要請」 など、労働者の給与アップを目指す政策が数多く実施されます。おそらく、今年の最低賃金の改訂も、昨年と同様に、大幅な上昇となる可能性が高いでしょう。
このように 「給与アップ」 がクローズアップされているにもかかわらず、スタッフ給与に直結する指定管理料については、相変わらず厳しい状況が続いており、コロナ禍による自治体の財政状況悪化等によって、さらに厳しい要求 (自治体側に立てば要請)をつきつけられる事例もあるようです。例えば、昨年、自治体から以下のような要請があり、どのように回答すべきか、指定管理者の方からご相談をいただきました。(いずれも、昨年秋に指定管理者更新の公募があった施設です。)
① 今回の公募では指定管理料を5年間で1,500万円削減したい。○○財団には、内部留保
が約1,900万円あり、これを活用するということで、削減に協力してほしい。
② 市が市民に定期的に配布している入浴施設無料利用券は、新規利用者を増やすという
当初の目的とは乖離していると考えられるので、次期指定管理期間では廃止したい。
(注:無料利用分の料金を市が指定管理料とは別に支払うことになっており、 無料券が
廃止されると指定管理者の収入が毎年百万円規模で少なくなる可能性がある)
私は、それぞれ以下のような趣旨の回答をするようアドバイスしました。
① 例えば、T自動車は連結決算で5兆円近くの内部留保がありますが、○○市が自動車を
購入する際、内部留保額を理由にディスカウントは要請していないはずです。また、内
部留保を理由に指定管理料を削減できるのであれば、多額の貯金がある市職員の給
料を下げることも理論的には可能なように思います。当財団に対して、内部留保を理由
に削減要請を行う法的な妥当性及び根拠をご教示ください。
② 無料利用券は市民に広く定着しており、「当初の目的と乖離していると考えられる」という
ような、あたかも、個人の感想のように受け取られかねない理由で廃止することには、強
い反発が想定されます。言うまでもなく、最終決定権者は主権者である市民であり、
まず、市民への説明責任を果たせるようなデータを市が示した上で、市が責任を持って
市民の理解を得ることが、混乱を回避するために最低限必要ではないでしょうか。
結論を言うと、いずれの法人も自治体が要請を取り下げ、指定管理者に不利益はありませんでした。(指定管理者にも、無事、選定されました。なお、①の回答の「職員の給料」の部分は、少し過激なので削除してもよいともアドバイスしましたが、指定管理者側の判断で、削除しなかったようです。)
私の経験では、自治体の要請に反論する際、「厳しい」とか「これでは運営できない」というような文言を使うことが多いようですが、このような文言だけで説得することはまず無理です。①の回答のように、他の事例を挙げる手法が効果的である可能性が高いと思いますし、利用者に不利益が及ぶ可能性があるのであれば、②の回答のように「主権者は市民」という原理原則を強調して、主権者(市民)の理解を得るデータを求めること(多忙な自治体職員が、データを収集・分析する余裕がないことが多い)で、説得できる可能性が高まるのではないかと考えられます。
指定管理料や管理運営のルールは、本来 (公募時に) 自治体が自らの権限で一方的に定めることができます。これを指定管理者に要請 (相談) するのは、「指定管理者の応募がなくなると困る」 とか 「自治体負担を削減したいが、サービス水準が低下して住民から批判されるのは避けたい」 のような、何らかの懸念があるからです。ですから、丁寧かつ冷静に反論すれば、指定管理者側の不利益を避けたり、最小限に留めたりできる可能性が十分にあります。(2022.1.3)